Serviceコンサルティングサービス

コンタクトセンターの機能と役割

90年代後半からインターネットの普及に伴って、メールやチャットなど電話以外のコンタクト・チャネルへの対応が不可欠となりコールセンターからコンタクトセンターへと呼称を変えながら益々業務の範囲を広げ、社内の様々な業務のBPO拠点として現在に至っているのがコールセンターの現代史だ。そして今後は益々インターネットが社会インフラとして定着しスマホ1人1台は言うに及ばずあらゆるものがコネクトするIoTの時代になることは確実であり、その社会変化に伴ってコールセンターも変質を余儀なくされる。

益々変革のスピードが加速する時代に合わせて、個々の企業におけるコールセンターの役割や期待効果をどのように進化させていけばよいか、の展開シナリオを描くことは経営陣が検討すべき喫緊の課題である。
インターネットの普及により事業のインフラそのものが変革することになるのでそれに伴う企業の事業戦略の修正が経営判断となるのは言うまでもないが、この事業戦略にはコールセンターが大きく関わることになる。顧客応対の戦略が事業計画の成否のカギを握るからである。

伝統的にコールセンターが対応してきた業務機能の整理

インターネット以降約20年のコールセンター現代史において、コールセンターは会社の事業活動を補完する「顧客対応」窓口の一元化運用を効率的に行う組織として進化してきた。顧客対応の大きな区分けは、「環境整備」「新規顧客獲得」「顧客継続・更新」「利用サポート」の4つである。

それぞれの業務を効率的に運営するためには21のセンター機能が必要となる。(下図参照)個々のセンター機能は21のスキルグループと考えれば良い。やるべき業務とスキルがセットになった業務単位のユニットである。

「お客様相談室」という呼称で運営されるコールセンターは、利用サポート業務の機能に加えて顧客継続・更新の一部カスタマーサービス機能を包含した組織のはずだ。

どの企業においても21機能のいずれか複数業務を運用するコールセンターが運営されているはずである。

これら21のコールセンター機能は右側9象限がインバウンドのコンタクト対応を前提としている。

何か問題や疑問があればお客の方からご連絡を頂く、というスタイルが伝統的なコールセンター発展の歴史だったのである。

CXを実現するコールセンターの機能

顧客のおかれている状況やカスタージャーニー上の接点などを意識することになると、従来型の受け身のカスタマーサービスの貧弱さや、コールセンターだけではなく関係するあらゆる部署の連携や協調の必要性が課題として浮上する。これを解消するためには新たな組織編成と施策展開が必要だ。

(B)の新規顧客獲得の段階においても、潜在見込み客へのアプローチを行う7.のインサイドセールスはマーケティング活動を補完する重要な機能となる。8.の潜在客がソーシャルメディアで何を語っているかを知ることは、顧客期待を知る上で大いに意味のある調査活動であり、そこでの対話が顧客獲得に大いに貢献するかもしれないチャレンジだ。また9.の他社との比較サイトや業界ポータルへの新規見込み客からのアクセスを迅速に活用することも新規顧客獲得に際してやらなければならない業務である。これらは従来のCSアプローチの延長上にはない。異なる知識とリテラシーを備えたチームを育成しなければ機能しない。

(C)の顧客継続・更新の段階の13.から15.でも、近い将来技術の進歩と経済性から音声認識や声紋認証IVRなどの利用・導入が容易になると予想される。それに伴い顧客登録や情報更新などのルーティン業務はセルフサービス化される方向に向かうと推測するが、その際にもシステムは100%完璧に稼働することはありえず、多かれ少なかれ途中で人間によるサポートが必要となるのでそのような事態に対処するハイブリッドサービスチームが組織されることになる。同様にチャットやビデオなどの新技術による対話をこなすスキルを持ったチームの編成も必須だ。IoT時代にはモノ同士が直接コネクトするが、その監視や起こり得るエラーやトラブルの問題解決に当たるチームも必要だ。

(D)の利用サポートの段階では、19.のカスタマーセグメントをより細かく区分した上でのロイヤルカスタマー対応の専任チームや、担当制・指名制での顧客対応を行うチームも編成されるようになる。優良顧客との絆を紡ぐことに対する重要性は益々重みを増すはずだからである。

また、IoTの時代では自社提供商品の範疇だけの対応で済むことはなく、他社製品との接続や機能分担が今より格段に増えることになる。そのため自社ノウハウだけでの応対に加えて関連企業の商品・サービスを理解しておくことも必要となり、20.の企業跨りでのサービスプロセスの構築が望まれる。サポートデスクはその構築責任を負う。

21.のステータスサポートは聞き慣れない用語かも知れないが、顧客のステータス管理が徹底されている業界でのステータスマッチを行う。例えばある企業の提供しているロイヤルティプログラムでダイヤモンド・ステータスの顧客が、競合他社に乗り換えを希望する際に同様のステータスを提供するというものだ。優良顧客の獲得には威力を発揮する。

従来型のインバウンド・コンタクトが減少すると予想されたとしても、近未来に必要となる多くの機能を実現するためにコールセンターの組織人員はそう大幅に減るものではなさそうだ。

しかしながらこのような組織に移行するためにはコールセンターの機能変革だけではなく、全社的な顧客戦略の構築と、マーケティング、
営業、フィールドサービス、情報システム、経営企画、財務経理、法務など社内組織との役割分界の整理・調整が不可欠となる。

事業戦略に見合うコールセンターの運営戦略シナリオ

言うまでもなくコールセンターは全社の事業戦略を補完するための組織であるため、会社が資産である顧客をどのように獲得しようとするか、維持しようとするかの方針に従って運営されなければならない。とはいえ、コールセンターで何ができるかについて明確な理解を持っていない社内各組織に対してはコールセンター側から積極的なアプローチが必要だ。

近未来に必要となるであろう機能がコールセンター側から提示されて初めて各組織の責任者や経営陣は具体的な事業戦略の検討に着手できることになる。

全社的な事業戦略は、環境変化、他社との競合や成長スピードなどが俯瞰され、業界内での自社のポジションも整理されるはずである。成長の過程を表す事業戦略であれば、その成長段階のそれぞれでどのような顧客セグメントにどのような商品やサービスを提供する必要があるかの前提条件を提供するものとなる。具体的な顧客戦略はその前提に立脚して検討されることになる。