コールセンターは様々なテクノロジーの宝庫です。音声系ネットワークに対応するACDをはじめとして、音声応答装置、通話録音装置、品質管理などの業務システムが加わり、メール、チャット、SMS、ビデオその他のデジタルメッセージに対応するメッセージングシステムと付帯の管理支援システムが必要とされ、更にはwebコラボレーションやバーチャルアシスタント、オペレータ支援の様々なソリューションが導入されています。
近年著しいのは、これらに音声認識技術やビッグデータを活用した様々なAIソリューションの導入です。
過去には大型冷蔵庫のようなACDを空調完備の機械室に置いておく必要がありましたが、今やほとんどのシステムがクラウドに存在します。
導入当初はシステムを使うべき背景が明確で期待効果も明白だったでしょうが、年月がたつと前例踏襲しているだけということになりかねません。本来は導入当初が改善のスタートラインであって、目標効果を達成するためのチューニングをほどこし改善努力を続けなければならないのがテクノロジーの世界です。
ましてや今やスタンドアローンで導入できるシステムは少なく、多かれ少なかれシステム連携して効果を出さねばならないのですから尚更日々のチューニングは重要となります。匠が道具を改良して使い続けるように、あくまでテクノロジーをツールとして使いこなしたいものです。
ブラックボックス化しないこと
何秒以内に何%のコールに応答したか、というつながりやすさの指標であるサービスレベルは使用するACDのメーカーによって計算式が異なります。計算式の条件設定を理解しておかないとサービスレベルを維持するためのアクションの取り方を間違う、というのは昔からの常識です。
システムからアウトプットされるレポートは数字を鵜呑みのするのではなく、どのような条件でその結果になったかの因果関係を理解しておく必要があります。システムの保守・修理のためではなくセンター運用の最適化のための理屈をわかっておかないといけないのです。
最適なスキルを持つエージェントへのコールの振り分けを正しく行うには、プロセスを科学する姿勢とリテラシーが必要となります。結果が良いだろうからAIに判断を任せると言う前に仮説を立ててトライアルを実行できるくらいの理論武装をしたいものです。理解が不十分でシステムに全て任せてしまっていると、何かあったときの対処や日常のプロセス変更に対応することができません。
機械は完璧だという幻想は捨てよう
設計精度が高くなくてもとりあえず一部のライブカスタマーとの応対に新しいテクノロジーを適用してみようといったトライアル試行を実施している企業はそう多くありません。多くの会社は検討に検討を重ねて完璧さを追求した後にリリースすることを選んでいます。
でも会社側視点で考えた仕様が千差万別の顧客の解釈を網羅できるはずはなく、完璧だと思えた設計にも想定外のことが案外起こり得るのです。完璧さを追求する必要がないというのではなく、完璧さを追求するのはライブな状態でなければわからないことがあるので、設計に時間をかけるか早くリリースしてチューニングに時間をかけるかの選択も現実解だということです。
システム導入には設定ミスもつきものです。
設計にもプログラムにも、そして設定や運用条件にも間違いや想定外が起こることを前提にテクノロジーとの付き合いをしていきましょう。